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住環境資料室

開発者たちの物語:開発者インタビュー

自然で安心な家を造ろう! 〜シラスが呼吸する壁へ生まれ変わる〜

「化学物質を含まない【自然素材】で建材を創る」
このポリシーのもと、何年も何年もかけて作り上げた、高千穂のシラスの壁「薩摩中霧島壁
そこには、ゆるぎない信念をもった開発者たちの物語がありました。


第2回 開発 〜固まれ! 役立つものに生まれ変われ!〜

◆火山灰シラスを活用する研究開発を開始!

取締役の増元 平成8年(1996年)年6月、社長の新留昌泰(しんとめ まさひろ)の命を受け、取締役の増元信夫(ますもと のぶお)と左官職人のA氏を中心に開発作業は始まった。
当時の様子を増元が語る。

開発とは言っても、どこから手をつけるべきか?
珪藻土壁と土壁の良いところを取り入れつつ、健康にいい壁用の建材を作るには...

まずは成分を選定していくことにした。
土・水・砂、それらのものだけでは、これまでの土壁と変わらない。
シラスを砂の代わりに加え、よりよい建材にするためには、そのほかに、どんな自然素材を組み合わせたらよいのか...

とりあえず各素材の割合を考えながら、何度も何度も試作してみた。
そして、何度か作業を進めるうちに、シラスには砂とは決定的に異なる特質があることがわかってきた。

各素材を混合したときは、ちょうどよい固さになり、塗りやすい状態になっているのだが、あっという間に固くなってしまうのだ。
塗り終わった壁ならまだしも、これから塗ろうとしているものまでが固くなってしまっては作業ができない。だからといって前もって水を多くすれば、シャバシャバとした水状になってしまい、塗ることができない。
仕方なく、途中で水を足していき、塗り作業を無事終えると、しばらくして塗った壁から水が垂れ落ちてきてしまう。

今までの「常識」の範疇では作業がしにくいし、逆に作業をしやすくすると、壁として成り立たなくなる。
どうしてなのか・・・?



◆シラスの特質をつかめ

シラス壁の顕微鏡写真 すべては、シラスの多孔質な組織(*1)に由来することが判明した。
シラスの組織にたくさんの穴や空洞があるのだ。
そこにたくさんの水を蓄えてしまうため、結果的に混合物に水分が少なくなって固くなってしまう。その為、スムーズに壁塗り作業をするためには、通常よりも多くの水分量が必要となってしまったのだ。

しかし、壁に塗ってしばらくすると、組織が固まり始め、蓄えていた水が放出され始める。だから、壁から水が垂れてきてしまったのだ。そのため試作中、時には、床が水浸しになることさえあった。

塗った後の壁にも不具合が出た。保水性が不安定な為、固まった後にひびわれが発生してしまうことがあったのだ。

この現象を抑えるためにはどうしたらいいのか?

増元達は、シラスを使うという思いつきから、すばらしい建材を創れるのではと勢い込んで作業を続けてきたのだが、ここに来て、思っていたよりもやっかいな代物ものなのかもしれないと思い始めていた。

もちろん、従来使用されている化学材料を混合すれば、解決するのはわかっていた。
でもそれでは『100%自然素材』の素材ではなくなってしまう...
世界中の自然素材の中から、この現象を抑えることのできる素材を探さなくては...


◆100%天然の素材で作るために...

当時、社長の新留の中に『建材とはいえ、シックハウス症候群の起きない、身体に良い建材を作るからには、人間の身体に入れても支障のないもの、すなわち食品に通ずる素材を使用すべきなのではないか』という意識が芽生えてきていた。

施工の風景 新留は言う。
「口に入れて安全な食品は原料を厳選しますよね。そこでは固形化するにしても着色するにしてもいちばん安全なのはやはり自然素材なんですよ。」
そんな時、周りの多くの人が「100%自然素材で作ることは無理だ」と指摘する中、とある研究者から「食品業界に(答えが)あるかもしれない」という心強い後押しを受けた。

食品に、保水性を保たせる為の素材でよいものがあるかもしれない!
増元たちは、すぐさま、食品に使用されている素材を集め、試作を開始した。

そしてついに、最適な素材を発見した。
食用の綿花粉末を加えることで、適度な軟性を得ることが可能になったのだ

この難問を解決するには3年を要したのだった。
第3回へつづく


*1シラスの多孔質な組織:
シラスの主成分は珪酸70%、アルミナ14%、カルシウム3%、ナトリウム3%、磁酸2%、カリウム3%、ほかマグネシウム、チタン、マンガン、リン酸などから構成されている。
そしてこれらは、結晶30%:非結晶70%で鉱物構成されており、この非結晶部分が軽石状の多孔質状になっている。


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