住環境資料室
高千穂の技術情報
- 開発者たちの物語:開発者インタビュー
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「化学物質を含まない【自然素材】で建材を創る」
このポリシーのもと、何年も何年もかけて作り上げた、高千穂のシラスの壁「薩摩中霧島壁」
そこには、ゆるぎない信念をもった開発者たちの物語がありました。
◆社長は”アイデアマン”
株式会社高千穂が産声を上げたのは昭和45年(1970年)の5月。
当時の日本は、銀座の「歩行者天国」が話題となり、万博が行われた年。
こんな高度成長期のまっただ中に、東京都墨田区に誕生した。
その後、昭和51年(1976年)に拠点を横浜に移動。
その頃には、高千穂のもつ技術力は高く評価され、大手ではカバーしきれない難しい工事を受注することも多くなっていた。
社長の新留昌泰(しんとめ まさひろ)は世間で言うところの“アイデアマン”。
昭和62年(1987年)のこと。リフォーム部門を延ばすためにはどうしたらいいのか?それには、ユーザーの気持ちを理解するのが一番!と、この部門を女性中心に構成し直したのだ。
これまでは建築技術者が中心の部門だったが、建築とはほとんど縁のなかった女性のスタッフをユーザーの窓口として採用。
このアイデアは周りを大変驚かせたが、ふたを開けてみたら、ユーザーには大好評。以来17年間、ずっと同じスタイルでリフォーム部門は成長し続けている。
その"アイデアマン"新留のひらめきが、高千穂の新しい建材を誕生させることとなった。
そしてそれは、長い研究開発の始まりでもあった...
◆きっかけは「モデルハウス」
それは平成7年(1995年)のこと。
ハウススクエア横浜のスペース内に、高千穂も環境共生住宅のモデルハウスを建てることとなった。
当時はまだ広く浸透してはいなかったが、環境に配慮した住宅こそがこれからの住まい必要なものだ、と以前から環境共生(*1)の考え方をいちはやく取り入れ、OMソーラーの太陽にエネルギー活用技術などを、これまでも積極的に採用してきた。
今回のハウススクエア横浜では、それらの技術を集大成したものを造ろう!と、建築家の奥村昭雄氏と共に、計画を練りに練った。
以前から壁の素材に「珪藻土壁(けいそうどかべ)」(*2)というすばらしいものがある、と聞いていた。古来からの土壁の手法に似て、自然で健康的な住まいを造るのに最適な素材であるということだ。
さっそくその壁をモデルハウスに採用した。
以前の住宅の壁は土壁といって、竹の骨組みの上にわらを混ぜ込んだ土を、乾いては塗るを何回も繰り返す方法で造っていた。
それでは壁の完成までに約半年と大変な時間がかかる、ということで、高度成長期には、短時間で乾く化学物質が主体の壁へと置き換わっていった。
しかし、通気性、耐火性や消臭性、なにより住む人間の健康にとっても、以前の土壁が一番最適なものであることは変わってはいない。現在では、接着剤等の化学物質から発生するホルムアルデヒドがシックハウス症候群等の病原になるという研究結果も知られている。
当時、高千穂でも、「健康な壁」を探し求めていた。
しかし「珪藻土壁」にはひとつ弱点があった。
価格だ。1平方メートル当たり16,000円(当時)は、高額だ。ユーザーへの負担も大きい。
もっと安く、よい素材で壁を造ることができないか... 新留と取締役の増元信夫(ますもと のぶお)を中心に、この構想が大きく広がっていった。
とりあえず、「珪藻土壁」の構造を調べてみようということになった。
そして調べれば調べるほど、匹敵する素材が明確になっていった。
そうだ、シラスだ。この成分は九州のシラスじゃないか!
新留の故郷、宮崎には、九州南部に広がる阿蘇山が噴出した火山灰(シラス)があらゆる場所に存在している。水はけがよく、粘度の少ないシラスは、農家の人間にとっては厄介者でしかない。
年賀の門松のまわりに雪に見立てて飾り付けをするくらいサラサラな砂。これが人間の健康な住まいを造る建材として役に立つのではないか!
しかもシラスは自然に焼成されているマグマセラミックスだ。珪藻のように、焼成作業を行わなくても利用することができる!
これはいける!
当時、シラスを材料にした建材は全く造られていなかった。ないなら、自分たちで創ろう!
新留と増元は、シラスを原材料に自然素材だけの壁造りを開始したのだった。
増元は言う。
「100%自然素材でなければ、意味がないんです。1%でも化学物質が混じっていたら、それは自然素材ではない。何よりもお客さんに健康な家に住んでもらいたい。お客さんのためにいい家を造りたい。それだけなんです。」
この後、左官職人と共に研究開発すること約3年。試行錯誤の繰り返しが始まるのである。
(第2回へつづく)
- *1環境共生:
- 自然と共存するということ。人類も環境の一部であるとの認識に立ち、地球の環境を大事にして人間も一緒に生きていこうという謙虚な気持ちをもった考え方。自然環境を守り育て、人類の他の生き物、物質と共に生きて行ける環境にしていこうとする考え方。尚、環境共生工学というものもある。次世代において、共生、低負荷、人間尊重の理念による持続可能社会を創造するために、エネルギー・物質循環と、安全な環境の形成技術を研究するための学問。
- *2珪藻土壁:
- 珪藻土を主な原材料とする壁。珪藻は植物プランクトンの死骸が長い時間かかって化石化してできあがった有機質の土である。このままでは建材として利用することができないので、無機素材へ変えるため、いったん焼成する作業が必要となる。コスト高になる原因は主にここにある。
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